500mlの海
(Yo ho ho…)
もう足りない
まだ足りない
波の音だけ 耳に残った
⸻
(Yo ho ho…)
今日も船を出す
500ミリリットルの海へ
明日のことは 潮に溶けて
分からないままでいい
(Yo ho ho…)
遠のいてく記憶
街灯みたいに揺れて
まだ夜に 呑まれてく
⸻
どこから 音がした
名前もない波の底
確かめる指先だけ
少しずつ 冷えていく
濡れた窓に映る顔も
誰だったか曖昧で
静かな航路の途中
言葉だけが沈んでく
⸻
「少しだけ」で済むはずの
夜ばかり増えていった
⸻
(Yo ho ho…)
壊れたままで進む
戻る理由も失くして
(Yo ho ho…)
引き返せない航路で
静かに 波へ溶ける
⸻
乾いた喉の奥で
波みたいな声がする
消えていった名前さえ
泡のように消えていく
朝焼けを避けるように
俯いたまま歩いた
カラになった缶だけが
やけに軽く鳴っていた
⸻
帰る場所なんてないと
風だけが知っていた
⸻
静かすぎる 頭の中
海の底みたいな夜
これでいいと頷くたび
少しずつ 遠くなる
⸻
(Yo ho ho…)
最後の一滴で夜を越えて
何も残らなくていい
(Yo ho ho…)
沈むことも航海なら
終わりまで 呑まれてく
白んでいく空の下
まだ波の音がする
また 呑まれてく