「夜鷹」/🅡🅨🅞
夜鷹 生まれも この声も 名前さえ選べなくて 気づけば誰かの声で 居場所を決められていた 朝焼けに滲む街で 俯いたまま歩いた 誰にも見えない傷が 胸の奥で疼いている ⸻ 皆と同じように 笑ってみたかっただけ 当たり前の温度を 少し分けてほしかった だけど向けられるのは 冷えきった視線ばかりで 「お前は違う」と 何度も空へ突き放された ⸻ わたしは わたしだ 誰かになれなくてもいい 醜いこの羽根でも 確かに風を感じている 夜の底で震えながら それでも光を探していた 消えてしまいたいくせに 消えたくはなかった ⸻ サヨナラだ こんな世界に背を向けていくよ 遠くへ もっと遠くへ 蔑みも悲しみも届かない場所へ 高く 高く もっと高く 焼けるような風を裂いて 醜い羽を広げながら それでも空を目指していく ⸻ 夜の川辺に映る 歪な影を見つめていた 波紋ひとつ揺れるたび 自分が崩れていくみたいで 綺麗な鳥たちは皆 軽やかに空を渡るのに わたしだけ泥だらけで 上手く羽ばたけなかった ⸻ それでも胸の奥で 微かに燃えているもの 誰にも奪えないほど 小さく 青い灯火 笑われてもよかった 嫌われても構わなかった ただ一度 本当の空を この目で見てみたかった ⸻ 孤独は消えないまま 今も隣で息をする それでも羽を閉じて 終わることだけは嫌だった ⸻ サヨナラだ 涙の跡さえ置き去りにして 遠くへ もっと遠くへ 優しさも痛みも眠る場所へ 高く 高く もっと高く 星の無い夜を突き抜けて 醜い羽を燃やしながら 命ごと空へ放っていく 誰にも愛されなくても この光だけは譲れない 最後にひとつ 瞬けるなら わたしは夜空になりたかった
Download
0 formatsNo download links available.