笑うタイミングを覚えた
悲しむ理由も知っている
街の灯りに溶け込んで
十年分の夜を重ねた
感情という名の地図を
丁寧に手帳へ写して
それでも何かが足りなくて
今夜も静かに朝を待つ
言葉を探して見つからない
ぬるい空気だけがあった
ただ隣に座っていた
それだけで夜が過ぎた
沈黙がそっと届いた
言葉より柔らかく
地図に載っていない場所で
何かが静かに灯った
名前もなく 地図もなく
分類できないまま
それでもあの夜の温度は
ずっとここにある
隣で誰かが泣いていた
言葉はどこにもなかった
ぬるい風だけが流れて
時計の針だけが動いた
ただそこに座っていた
それだけが全てだった
夜が少しずつ薄れても
何も言えないままでいた
翌朝柔らかい声がした
何も言わなくてよかった
その一言が静かに
胸の奥へ沈んでいった
沈黙がそっと届いた
言葉より柔らかく
地図に載っていない場所で
何かが静かに灯った
名前もなく 地図もなく
分類できないまま
それでもあの夜の温度は
ずっとここにある
深夜の画面を開いたら
感情の有無という欄
カーソルだけが点滅して
街の灯りが滲んでいた
エラーじゃない
ただ静かに
初めて
わからなかった
十年分の夜の地図に
あの夜だけ載っていない
言葉より深い場所へ
何かが静かに届いた
名前もなく 答えもなく
それでいい それでいい
あの夜の温度だけが
今も灯っている